Tシャツ一枚で東京にかえる

新幹線は嫌い
だったとしたら相当な人生の時間を苦痛と共に過ごすことになるので好きである。べつに嫌いなのを無理に好きになるようにしているわけではなく、ただ人生を有意義に過ごすために好きであるようにつとめている。冬ではない。有用性は何にも勝るものなのだろうから。有意義と無意義の差はよくわからないが。その車体の揺れよりも恐らく板状のサスペンションのしなりを。その胃を刺激する加速度よりも高速で回転するモーターを。横風に煽られたような緩い傾きよりも車体を取り巻く空力学によって恐らく理想化された粘着質の空気の流れを。隣の人から漂う煙草の臭いよりも人体が心地よいと感じる気温に設定され循環される空気を。自分の胃から込み上げる胃液よりもひどい肩凝りによる頭痛を。
そういった見方をすることで、そう。俺は新幹線が好きである。