蜂

朝起きると幻覚を見た。
蟲の羽音がうるさくて目が覚めた。目を開けて天井を見てみると虫が飛んでいる。煩い。眼鏡をかけて確認する。蜂か、虻のようだ。蠅ではないと思う。そう思いたい。朝起きて蠅が頭上を飛んでいるなんてまるでここが地獄のようじゃないか。そうやって10分ほどだろうか。頭上を飛び回る蠅の動きを見ていた。電灯のスイッチの穴から中に入ろうとするが入れないようだ。虫を殺す道具はゴキブリ用のものしかない。仕方がないので窓を開けて出て行くのを待つことにした。布団から這い出して。窓を開けた。そうして後ろを振り返ってみると蟲はいなかった。一番論理的な話は私が窓を開けてたその瞬間に頭上を通って蟲は飛び立っていったのだろう。だが、羽音は部屋の真ん中あたりに聞こえていたし、そもそもどうやって蟲が入ってきたのかも分からない。そうしてもう一つ不可解なことがある。私はかけたはずの眼鏡をかけていなかった。