ねくたい

ネクタイは個性を殺すなんて言う奴がいるが、ネクタイは個性なんて抽象的なものじゃなくて、現にいま私を殺している。殺している現在進行形。ネクタイに全体重を預けてブラブラと揺れるのは子供の頃のブランコを思い出してなんだかとても愉快だ。今ではあの、幼稚園の隣にあった公園はなくなってしまっただろうか。別に苦しいとかそんな感じは始めだけで、いまはすこし頭が痛いだけだ。今がどれくらい死んでいるのかはもうわからないけど。勘違いされるかもしれないからはっきり断っておくと、私は自殺をしているのではない。ネクタイに殺されているのだ。私自身には微塵も、いや、すこしはあるか、自殺願望はない。だが、ネクタイが私を吊して、動脈を締め揚げ、脳細胞を酸欠に陥れ、ゆっくりと、そして平素よりは急激な速度で、死に向かって邁進しているのだ。目の奥にちらちらと白い光が点滅する。ブランコはもう揺れていないか。