皮のコートがべとついて

単純に俺の手が汗ばんでいるだけである。久しぶりの夜の山手線は茶髪が立っていて鋲つきデニムなんかはいてる人たちに揉まれたのだが、ここはどこのライブハウスだろう。そもそもこの人たちたぶんそういう人じゃないんだよね。特殊な差異は普遍化されて方向性、意味を再度付加されて、フヨフヨと世の中を徘徊する。まるで幽霊だ。内的動機を失ったままに様式として尖った髪の毛は主を持たない。過激な叫びは人の間で無限にこだまする。こうやってフルクサスも解体されたか。再評価とはこだまを拡張器に繋ぎ直してぶちまける作業。様々なディストーションがランダムにぶちこまれたこの世界はまるでノイズだけの雑音。そのくせ、そこら中に亡霊が漂っている。ただそのようにある亡霊が。人間はこだまの反響する空虚な器か。そのようにも見える。が、こだまは空間で震えている。