tako

今、某有名コンビニエンスストアで売られている商品のひとつに俺がとても好きで、そう、愛しているといっても過言ではないような商品が並んでいる。
そいつは赤い姿で俺を魅惑し、深い深海で俺を翻弄する。
そう、その名は。タコ飯。
タコ飯の作り方は非常に簡単だ。
鍋に米とごぼうやにんじんなどを入れて、出汁で炊く。そして途中からタコを乗せて蒸らしてやれば完成だ。
そんな簡単に作れるタコ飯ではあるが、奥は深い。
何よりもタコの鮮度がすべての問題であるし、下手なタコを使うとくさくて食えない代物になる。そして今回のタコ飯がいる。
確かにコンビニの飯はまずい。すべてがまずいわけではないが、あるレベルを超えた商品は非常に少ない、というかコストパフォーマンスと商品の量を考えれば限界のレベルには到っているだろうが。
このタコ飯は少々香りがなさ過ぎる。そして何より、タコが不味い。コンビニ弁当に香りを求めるなど何事だといわれるだろう。
だが、俺は一つの提言をしたい。
このような似非タコ飯が全国で10826店舗に並び、全国1億数千万のジャパニーズどもに、「あぁ、これがタコ飯かぁ〓何だたいしたことないなぁ」などと思われていることはとても不愉快だ。いや、不愉快を通り越してこれはタコ飯に対する冒涜ですらあるかもしれない。
たしかに、私はタコに対して不愉快な思い出があるし、さらにいえば文化祭でのサークルの出店がたこ焼きに決まり、こんな関東人間どもにたこ焼きが焼けるとは思えないとはっきりと公言してしまっているほどだ。
そもそも奴らは大きな勘違いをしている。
明石のタコが良いと思ったら大間違いだ。あいつらは陰気で狡賢く、海底の狭い暗がりの中に引きこもっている。そこでじっと、ただ黙々と日々の生活をしているのだ。そう、インターネットに拘束された俺のように。俺の繊細なアプローチも無視し、むしろどこの誰とも知らぬ親父の無骨なアプローチを受け入れるような浮気者。俺の愛をつれなく振り回す気紛れ者。それが明石のタコだ。
だが、いや、だからこそ明石のタコが上手いこともしばしばある。
いや、むしろ、大抵の明石のタコはうまい。と、言うのもまずいタコの方が少ないぐらいだからだ。
だが、そこに奴らの隙がある。そしてタコはその隙を見事に突いている。
彼らは試食の段階では美味かったのかもしれないタコ飯を商品化した。その瞬間にタコはニヤリと口元を歪ませて自らの体を赤く染め、不味く硬くなったのだ。
そんなこととは露知らず、(以下略