柄谷と小林はまったく別格である。小林の深く、優しい理論に接すると柄谷の描く理論はカサカサに乾燥した無味な理論であるように感じる。平素の言葉で理論をつむぐ小林に対して、柄谷は数学のように限られた世界でのみ使うことのできる言葉を使う。そこで羽を伸ばして空に舞い上がるような余裕のある理論ではなく、完全に積み上げて、寸分の隙間も無いことを美徳とするような、確かにそれ自体としては完成しているがそこで終わってしまうような硬い理論である。